第三十回紀念祭寮歌 《 春甦る 》 橋爪健・作詞/矢野一郎・作曲 一、春甦るときめきに 燃ゆる若樹の光より いのちの群はわなゝきて 大地の齢ひをさゝやきぬ 二、 跫音秘めて歩みよる 新生れし時代の歡びを 盛りてほゝゑむ花籠に 曙のいろ君みずや 三、 哀傷こそあれたまゆらの うら若き日の旅すがら 橄欖の蔭にさまよひし 衿りはとはに忘れじな 四、 眞理のみちの嬰児が 宇宙の律に瞠りけむ 双眸にやどす耀きを 生命の詩と誰か知る 五、 土の郷愁に掘り入りて しゞなる懐疑身にしめど 愛しく強く肯ひし これの生にゐる力かな 六、 智慧の扉は堅うして 魂の夕星はろかなり 秘鑰をすてゝ合掌の おのれに醒めよ自治の友 七、 まぼろし躍る青春の 祭の壇湛へけむ 銀觴春はうつろへど 唇に尽きせぬ焔かな 八、 涙ぬぐはずほぐれゆく 金燭のかげ八寮に 十年みたびをめぐりこし 饗宴の宵のおぼろかな (大正九年) |